『System Initialize....OK』
『Loading Operation System....OK』
『Device Check....OK』
『Enter Command Mode....コマンド待機状態ニナリマシタ』
「ステータスを報告しろ」
『全しすてむハ正常ニ作動シテイマス。外部電源ニテ作動中。バッテリー容量は35%デ現在充電中デス。視覚せんさーハ両目トモ正常デス。
聴覚せんさーハ両耳トモ正常デス。音声合成回路ハ正常デス。詳細ヲ報告シマスカ』
「いや、必要ない。自意識ファイル AYUMI-01 を実行しろ」
『Loading Self Conscious Image File <AYUMI-01.ego>....OK』
『Executing <AYUMI-01.ego>...』

亜由美は意識を取り戻した。
『ウーン…、頭ガモヤモヤスルワ。ココハ、ドコカシラ』
「よし、成功だ」
亜由美は声のした方向を向こうとしたが、体が言うことを聞かない。
視界もメガネをはずしたときのように靄がかかっていた。
『何ガ成功ナノ?眼鏡ハドコ?』
「眼鏡はちゃんと掛けてるよ。AYUMI-01、眼鏡に合わせてオートフォーカスを補正しろ」
『ピポッ。おーとふぉーかす補正シマス』
目じりでモーターの動く音かかすかにして、亜由美の視界が晴れた。
『ここは、科学部の部室ね。活動の成果を見せるって言ってたけど、どこにあるの』
「はは、すごいや。ねえ、会長。自分の体がどこかおかしいと思わない?」
『どこも、おかしくないわよ。そういえば、頭がぼうっとするし、何だか声も変ね。風邪かしら』
「ははは、風邪だって。ロボットが風邪をひくはずないのに」
『ロボット?なんのことよ。それより成果はどこなの?』
「わかったわかった、すぐ見せるから待っててね」
そう言うと、拓郎は部室の奥から大きな姿見を持ってきた。
「演劇部から借りてきたんだ。まあ見てよ」
そう言って姿見を亜由美の正面に立てた。
『この鏡が成果なの?ただの鏡にしか見えないわよ』
「鏡じゃないよ。それに映ってる姿を見てよ」
『あたししか、映ってないわよ。…エッ。な、なんで裸なのよっ』
「まあ落ち着いて、ゆっくり下から上まで確認してよ」
亜由美は鏡に映る姿を確認した。
両足は黒光りする金属で覆われており、ブーツと一体化した黒いニーソックスを履いているようであった。
ひざ上から首元までは、乳白色のプラスティックでできた人形のようで、股間・腹部・胸の両乳房には取り外せそうなラインが入っていた。
両腕も同様のプラスティックになっており、手首から先に一部が足と同じ金属で覆われており指を出したグローブをはめているようであった。

首には金属のリングが取り付けられ、その上の顔面もプラスティックになっていた。
両耳は金属製のヘッドホンのようなカバーで覆われ、そこからは先端が赤く光るアンテナ状の突起が伸びていた。
そして頭髪は、メタリックに輝く金属繊維になっていた。
『えっと、よく、理解できないんだけど。これは、何かのトリック?』
「違うよ。正真正銘、これが会長の姿さ」
『だんだん、思い出してきたわ。もしかして、あたしはロボットなの?動けないのも、ロボットだから?』
「そうだよ。さすが会長は呑み込みが早いなあ。それじゃあ動けるようにするから、じっくりと体を確かめてね。AYUMI-01、動作ロック解除。
クレイドルへの固定は維持」
『ピポッ。動作ろっく解除シマス』
亜由美は、両足が台座に固定されていることを除いて体の自由を取り戻した。
恐る恐る両手を顔の前に持っていき、金属に覆われた手を眺めた。
そして困惑した表情で、眼鏡に触れる。
『あたしの眼鏡…』
眼鏡は、蔓の根元が耳カバーに埋め込まれて固定されていた。そしてガラスは透過型のディスプレイになっており、様々な情報が表示されていた。
「うん、この前メガネをなくして困ってたよね。二度となくさないように眼鏡も体の一部にしたんだ」
『感謝すればいいのか、怒ればいいのか、わからないわ。とにかく、早く自由にしてほしいんだけど』
「自由になったらどうするつもり?」
『もちろん、生徒会室に戻って事務の続きをするわよ。改造にどのくらい時間がかかったか知らないけど、仕事の遅れを取り戻さなきゃ。
この体が成果として認められるかは検討させてもらうわ』
「なんでそんなに平然としてるんだよ。普通はパニックになって、泣いたり叫んだりするもんだよ。ねえ、わかってる。
僕は会長のすべてをコントロールできるんだよ。どうして怯えたりしないんだよ。AYUMI-01、動作ロックしろ」
『ピポッ。動作ろっくシマシタ。手術中にも言ったけど、泣いたって事態は好転しないもの。どうせ元の体には戻れないんでしょ』
亜由美は拓郎を指差した状態で動きを止めたが、強気な口調は変わらなかった。
「そうだよ。会長はそんなロボットの体で、生徒会長として認められると思っているのかい。お前は本当はセクサロイドなんだよ。AYUMI-01、自慰をしろ」
『言っていることが、矛盾してるわ…ピポッ。現在性器ガ装着サレテイナイタメ、自慰ハ不可能デス…生徒会長として科学部を守ってほしいんじゃなかったの?』
「そ、そうだよ。生徒会長として認められなきゃ科学部が守れないよ。どうしたらいいんだよ」
『そんなこと、自分で考えなさい。とにかく、あたしを生徒会室に戻しなさい』
「うるさいっ、AYUMI-01、自意識ファイルの実行を停止しろ」
『ピポッ、<AYUMI-01.ego>ヲ停止シマス。現在ノ状態ヲ保存シマスカ』
「保存しろ」
『ピポッ、同ジ名前ノふぁいるガアリマス。更新シマスカ。新シイふぁいるヲ作成シマスカ』
「新しいファイルを作成しろ」
『ピポッ。<AYUMI-02.ego>ヲ作成シマシタ』
「ふぁはは、ほら見ろ。どんなに強がっても僕には逆らえないんだ」
『ピポッ、自意識ふぁいるノ実行ヲ停止シマシタ。ゴ命令ヲドウゾ』
「よし、いま保存したファイルの書き換えを行う。自己認識はどうなっている」
『ピポッ、自己認識ハ、人間50%・生徒会長20%・ロボット20%・セクサロイド5%・ソノ他5%デス』
「よし、人間を5%に、セクサロイドを50%に変更して実行しろ」
『ピポッ、変更シマシタ。』
『Loading Self Conscious Image File <AYUMI-02.ego>....OK』
『Executing <AYUMI-02.ego>...』

 

←戻る  次へ→