『System Initialize....OK』
『Loading Operation System....OK』
『Device Check....OK』
『Loading Self Conscious Image File
『Executing
亜由美は瞬きをすると、あたりを見回した。
『…起動直後はくらくらするわね』
亜由美はこめかみに右手をあててつぶやいた。
眼鏡の上を大量の文字が高速で流れ、それが止まると改めて周囲を見回した。
『やっと安定したわ。えっと、みんなのその顔からすると、部長会は問題なかったようね』
「はい、滞りなく進みました。各部への予算配分も問題なく行われました。科学部の廃部についても、石田は抵抗しましたが最終的には決定し、設備は生徒会の備品となりました」
『あたしが改造されたことは話したの』
「いえ、それはまだです。石田の動き次第ではそうすることも考えましたが、おとなしいものでしたよ」
「そうそう、科学部宛に送られてきた荷物を押収してあります。」
潤一はそう言って部屋の隅を指さした。
そこには、金属製のトランクがあった。
『中身は何なの』
「それが、鍵の開け方がわかりません。会長を改造した組織にかかわると思いましたので、下手にいじらずに石田に開けさせようと考えていました」
『そう、何かしら』
亜由美はトランクに近づいた。
トランクのランプが緑色に点滅し、亜由美のアンテナの先端も同様に点滅を開始した。
『えっ、なに…が…オキテ…イル…ノ……』
眼鏡の上を激しい勢いで文字が流れ、亜由美は次第に無表情になっていった。
両手をまっすぐに降ろしてトランクの前に立って、単調に言った。
『ピッ。外部ゆにっとトりんくシマシタ。ピッ、指定着衣たいぶBヲ確認。ピッ、現在ノ着衣ハ指定外デス。変更シマスカ』
眼鏡には AYUMI-02 suspend. Command mode と表示されていた。
「どうしました」
潤一が言った。
『ピッ、現在ノ着衣ハ指定外デス。変更シマスカ』
亜由美は無表情のまま繰り返した。
「変更してくれ」
『ピッ。ますたーノ音声ガ認識デキマセン。りもこんヲ使用シテクダサイ』
潤一はトランクを亜由美の前から引き離した。
『ピッ、外部ゆにっとトノりんくガ切断サレマシタ。…ピッ、オドロイタワ』
「大丈夫ですか、会長」
『ピッ、エエ・ダイジョウブヨ。突然ノコトダカラ、驚いただけ』
亜由美はロボット的な口調から次第にいつもの口調に戻っていった。
『あのトランクには、あたしのパーツが入っているわ。あれに触れるとあたしの意識は一時停止されて命令を待つのよ。あたしが質問したらリモコンで許可して頂戴。石田様じゃなくて高橋君がマスターだったら楽なのに。あ、意識が停止されてる間も記憶はあるから変なことはしないでね』
「もちろんです」
『それじゃあ』
そう言って、亜由美は再びトランクに近づいた。
耳のアンテナが光り、再び無表情になった。
『ピッ、意識ガアルウチニ、言イ忘レテイタコトガアルワ。ピッ、着衣ノ変更ハ裸ニナルケド、せくさろいど…デスカラ、見ラレテモ恥ズカシクアリマセン。ピッ、デスカラ部屋ヲ出ル必要ハアリマセン』
亜由美は無表情なまま単調な声で言った。
『ピッ。外部ゆにっとトりんくシマシタ。ピッ、指定着衣たいぶBヲ確認。ピッ、現在ノ着衣ハ指定外デス。変更シマスカ』
潤一はリモコンの画面を見た。リモコンには亜由美の全身像が描かれており、Costume type Unknown と表示されていた。Costumeには、Type-A と Type-Bがあり、Type-A は裸体が、Type-B にはブレザータイプの制服が表示されていた。
潤一は、Type-Bを選んで変更を指示した。
『ピッ、着衣変更ヲ確認シマシタ。指定外着衣ヲ排除シマス。着衣排除ノタメAYUMI-02.egoヲ限定もーどデ再開シマス。ピッ、やっとこの服が脱げるわ』
そう言うと、亜由美は着ていた制服を脱ぎだした。
「か、会長」
潤一はうろたえた。
『ピッ、だから言ったでしょ。ピッ、あたしは裸になるけど気にしないでって。ピッ、この後は手伝ってもらわなきゃいけないんだから』
ブレザー、スカート、シャツの順に脱いでいき、ブラジャーとパンティを外すとプラスティックのような材質に包まれた全身が現れた。
「手伝うとは、どういうことですか」
『それはね…ピッ、指定外着衣ヲ排除完了シマシタ。AYUMI-02.egoヲ停止シマス』
亜由美は無表情に直立姿勢となった。
「会長?」
『ピッ、腰部パーツ01ヲ取リ付ケテクダサイ』
リモコンの画面にはスカートをかたどった部品が表示されていた。
潤一はトランクの中にある同じ形の部品を取り出し、亜由美の腰に近づけた。
部品は磁石のように吸いついて、カチャリという音とともに固定された。
『ピッ、腹部パーツ02ヲ取リ付ケテクダサイ』
リモコンの画面には制服のブレザーの胸から下の前半分をかたどった部品が表示されていた。
『ピッ、背部パーツ03ヲ取リ付ケテクダサイ』
リモコンにはブレザーの背面をかたどった部品が表示されていた。
同様にセットすると亜由美は続けて機械的に指示を出し、潤一は胸から腕へと順にパーツをセットしていった。
最期にトランクの中には、制服のリボンをかたどったパーツが残った。
『ピッ、胸部パーツ37ヲ取リ付ケテクダサイ』
胸にリボンを取り付けると、メタリックな制服に身を包んだロボットが完成した。
『ピッ、指定着衣ノ装着ヲ完了シマシタ。AYUMI-02.egoヲ起動シマス』
亜由美は表情を取り戻すと、自らの身体を確認するように見た。
『高橋君、ありがとう。これでひとつ思考プログラムの負荷が減ったわ』
「そ、そうですか。しかし会長、その姿では人前にでられないのではないですか。それにいま下着をつけていないですよね」
『そのことなら大丈夫よ。あたしは生徒会の備品として扱って頂戴。新しい会長を決めないといけないわね。あと、下着のことだけど、あたしはセクサロイドなんだから下着なんてつけないわ。もっとも今は性器パーツがないから関係ないけど』
亜由美はそういってスカートをまくりあげて、つるつるの股間を見せた。